デジタル技術を活かして、
建築の未来をひらく
全国の現場を支えるシステムをつくる建築デジタルエンジニア。 組織をまたいで連携し、柔軟な発想で新しいことに挑戦できる仲間を募集しています。
profile

中谷 晃治
建築総本部 DX統括推進部長
大学の建築学科卒業後、1992年に新卒入社。30年以上にわたり、国内外の「地図に残る仕事。」を支える建築生産のデジタル化に従事し、施工管理から全社DXシステムの企画・開発まで幅広く経験。建設キャリアアップシステム立ち上げに参画するなど、日本建設業連合会やRXコンソーシアムの委員としても業界全体のDX推進に貢献している。近年、建築DX標準基盤「T-Basis X」を構築、全国の作業所への導入・活用を推進している。この取り組みは、「日本DX大賞2026」の業務変革部門で大賞を受賞し、建設業界全体への貢献も期待されている。
interview
現代の建築プロジェクトは、環境への配慮や周辺の景観との調和、利用者の心を和ませる空間の造形など、従来に比べて複雑で施工が難しいデザインが増える傾向にあります。労働人口の減少から建築現場の担い手が不足するなかで、ますます高度な技術が求められているのです。このような状況を乗り越えるには、これまでの人海戦術による労働集約型の建築からの脱却――先進のデジタル技術を有効活用して人は付加価値の高い業務に集中するような、新たなものづくりの確立が必要です。さまざまな領域で培われたIT人財の知見を生かし、大成建設が目指す建築DXをさらに前進させてください。
建築業界におけるデジタル技術の重要性について話すとき、私はよくスペインのバルセロナ市に建設中のサグラダ・ファミリアを例に挙げます。建築家アントニ・ガウディの遺作であり、完成までに300年はかかると考えられていた壮大な教会建築ですが、ガウディ没後100年にあたる2026年、世界一高い教会の「イエス・キリストの塔」が完成しました。
サグラダ・ファミリアが竣工までにここまで年月を要しているのは、複雑な曲線が多用されたデザインであり、これらを彫刻できる熟練工が限られていることが要因の一つでした。
しかし現在では、3Dスキャンや3Dモデル、3Dプリンタなどのデジタル技術を活用することで、複雑な形状を高い精度で再現しながら、施工の効率化を大きく進めています。つまりデジタルの力なくしては、サグラダ・ファミリアの工期を劇的に短縮することは困難でした。
大成建設が手がける大規模な建築プロジェクトにも、同様の課題があります。構造的な労働力不足のなかで、環境への配慮や人に優しい空間造形などが重視され、これまでより複雑で施工が難しいデザインが求められています。国土交通省から発表されたi-Construction2.0でも、2023年度比で2040年度までに生産性を1.5倍以上に向上させるという目標が示されました。そのためには発想の転換が必要であり、従来のような多くの作業者による労働集約型のものづくりでは対応できません。デジタルの力を駆使して施工品質を向上させ、相対的に少ない人員で施工できる「建築DX」の取り組みが不可欠になります。

大成建設が目指すDXは、デジタルを活用してすべての人をつなぎ、建設業の枠を超えた新たな価値を探求・創造することです。
その実現に向けて、「生産プロセスのDX」「経営基盤のDX」「サービス・ソリューションのDX」の3つを柱に、段階的に取り組みを進めています。
なかでも、建設現場の働き方を大きく変えるのが「生産プロセスのDX」です。デジタルツイン、リモート技術、AIをコア技術として、より安全で、生産性が高く、働く人が魅力を感じられる「夢のある建設現場」の実現を目指しています。
また、目指す未来の姿を社員一人ひとりが具体的に共有できるよう、2030年の働き方を描いた「The Way We Work」という動画も制作しました。「2030年に、私たちはどのように働いていたいのか」。その将来像を共通のゴールとして共有しながら、現場とともにDXを進めています。
デジタルツインでは、BIMなどのデータを活用して、着工前の段階で意匠・構造・設備の干渉や施工上の課題を確認しています。後工程で発生する可能性のある問題を前工程で解消する「フロントローディング」を進めることで、手戻りを減らし、より確実な判断と生産性の向上につなげています。
さらに、大成建設では「建設承認メタバース」の活用も進めています。BIMデータとゲームエンジンを組み合わせ、関係者が同じ仮想空間に入り、完成後の建物を疑似体験しながら検討や協議を行う仕組みです。図面や資料だけでは伝わりにくかった空間や納まりも、その場で確認しながら意見を交わすことができます。
リモート技術のうち、大成建設が進める建築DXを支えるのが、「T-BasisX」です。T-BasisXは、T:Taisei(大成建設)のX:Transformation(変革)のためのBasis(基盤)という考え方のもと、①Wi-Fi環境、②位置把握、③IoT見える化システムの3つの要素で構成されています。
建築プロジェクトにおけるさまざまな情報をデジタルでつなぎ、施工中の業務効率化や情報共有を支えるとともに、将来的なAI活用にもつながるデジタル基盤として展開しています。
複数のアクセスポイントを網の目のようにつなぐメッシュWi-Fi技術を活用し、施工中の建物でも、電波が届きにくい地下階や高層階まで安定した通信環境を整備しています。これにより、現場内でのタブレットを使ったWeb会議や、作業員による高層階の工事進捗状況の入力が可能となりました。
さらに将来は、ドローンや自律搬送ロボットなどが建築現場でより幅広く活躍し、夜間はロボットが搬送や点検などの作業を担い、日中は人が判断や調整、創造的な業務に集中できる現場を目指しています。デジタル技術とロボットを組み合わせることで、人と機械がそれぞれの強みを生かして協働する、新しい建築現場の実現に取り組んでいます。
また、大成建設では、ネットワークカメラを活用し、現場から離れた場所でも工事の進捗状況をリアルタイムで確認できる環境を整えています。遠隔から現場の状況を把握することで、進捗確認の効率化や安全管理の高度化にもつなげています。
AIの活用では、360度カメラで撮影した現場の映像をAIが解析し、工事の進捗状況や資機材の位置・数量などを自動で認識、図面上に色分けする仕組みを導入しています。これまで人が現場を巡回しながら確認していた情報をデジタル化することで、確認作業の効率化と、より正確な現場把握につなげています。今後は360度カメラを搭載した自律飛行ドローンによる現場撮影も取り入れ、日々変化する工事の進捗を自動的に記録・把握できる仕組みを目指しています。
さらに、「現場施工AIコンシェルジュ」の開発も進めています。現場にあるセンサーやカメラ、各種アプリの情報をMCPと呼ばれる仕組みで生成AIにつなぎ、チャットで質問するだけで「現場の今」を教えてくれるサービスです。AIが複数の情報を整理し、根拠となるデータとともに回答や提案を行うことで、現場監督が「情報を探す時間」を減らし、「判断する時間」に集中できる現場を目指しています。


建築DXの「モデル現場」を一つつくり、理想的なリモート管理・支援体制を構築することは、それほど難しいことではありません。大成建設が目指しているのは、その仕組みを一部の現場にとどめず、全国へ展開することです。
現在では、全国の現場に共通のデジタルインフラを整備し、現場のさまざまな情報を安全な環境で一元的に把握できる「見える化」の仕組みを構築しています。これにより、場所にとらわれず現場を支援できる環境を実現しています。
DXを全国の現場に定着させるため、作業所長に向けて新たな取り組みやその意義を継続的に発信するとともに、各支店にDX責任者・担当者を配置し、現場の声を取り入れながらシステムの改善や新たな施策を進めてきました。
また、T-BasisXは現場を「監視する」ためではなく、本社や支店が現場を見守り、ともに課題を解決するための「支援する」ツールであることも繰り返し伝えています。
さらに、2023年から進める企業風土改革のもと、「挑戦していい」「失敗してもいい」「変化・成長し続ける」というメッセージが全社に浸透しつつあります。こうした風土も後押しとなり、デジタルを活用して施工管理をより良く変えていこうという機運が、社内全体で高まっています。
大成建設では、DX統括推進部に加え、デジタルプロダクトセンター(DPC)や作業所業務推進センター(CSPC)が連携し、全国の現場を支援しています。現場経験を持つ社員が中心となり、作業所の業務を理解した上でリモート支援を行っています。
また、全国の現場を直接支援するICTキャラバン隊には、ICTに精通した社内外のメンバーが参加し、操作教育やトラブル対応を実施しています。リモートとオンサイトの両面から、DX施策の定着を支えています。

私はこれまで、建築というリアルな世界と、システムというバーチャルな世界を行き来しながらキャリアを積み重ねてきました。そんな私が今強く感じているこの仕事の魅力は、当社のソフトウェア開発はPCのなかで終わらず、現場の業務のあり方を大きく変革し、リアルな建築物として残るということです。完成したスタジアムや市民会館などは長年にわたって地域の人たちに使われ、親しまれる特別な場所になります。デジタルの世界で磨いてきた自分の技術を、リアルな世界で役立てる手応えを実感できる仕事です。
建築に関する知識の有無は問いません。ITの世界で何か一つ深く取り組んできた技術領域があれば、建築デジタルエンジニアとして活躍していただけると思っています。社内に建築のプロフェッショナルが大勢いますので、彼らとコラボしていただき、大成建設のものづくりプロセスの改革に取り組んでほしいと思っています。デジタルツイン、リモート技術、AIというコア技術を用いた建築DXの施策を、多くの協力会社と連携しながら建築現場に適用していただきます。
BIMはもちろん、AIやIoT、ロボットなど、幅広い分野に会社として積極的に投資しています。技術センターや設計/施工部門とも密に連携し、新たなシステムやツールの企画から実証、全国展開まで自社で完結することができます。社内で開催している「AI利活用コンテスト」には、毎年300件近い応募があります。自律搬送ロボットの開発では、世界的なスタートアップ企業との価値の共創に積極的に取り組みました。その成果として、現場にランダムに置かれた建築資材を種類ごとにピックアップして自動で整理しながら搬送するという、国内外で特許として承認された機能の開発にも成功しています。
BIMによる図面審査や各種ロボットの活用については、関連する法令の整備に伴って、これから新たな展開が可能になる時期を迎えると考えています。DXチームのリーダーとして、5年後、10年後を視野に若手メンバーを率いて活躍してくれるような人財に期待しています。


message
システムの開発や改修では、多くの協力会社と連携します。DX施策の現場への実装においては、作業所を所管する全国12の支店に加え、社内の建築本部や設備本部をはじめ、リニューアル本部、設計本部、調達と積算を担うVI本部、技術センターなど、数多くの関連部署とも協働します。さまざまな部署の社員とのコミュニケーションを通じて、DX推進リーダーとして新たな気づきを得ていただくことも多いのではないかと思います。
建築デジタルエンジニアに求めたい資質として、主体的に考えて新しいことに積極的にチャレンジしていく姿勢を持つ人に向いていると思います。同時に、コンプライアンスや情報セキュリティについて、高い意識を持っている人物が望ましいと考えています。法令遵守が厳しく問われる建設業界では、社内外を問わず誠実で公正なコミュニケーションが基本であり、周囲から信頼を得られる人であるかどうかも大切です。また、BIMなどですべての現場データを集約して扱う以上、生産図面をはじめとする情報資産の価値を正しく理解し、日頃から情報漏洩リスクを意識した行動が求められてきます。
採用面接には私も参加します。候補者の皆さんが、大成建設でどのような仕事やキャリアを希望されているのかを率直にお聞きしたいと思っています。環境配慮型の建設に役立つシステムを高度化したい方、ゆくゆくは海外拠点で腕を磨きたいという方、都市開発の研究をライフワークにしたい方、デジタルに強い作業所長になりたい方など、多様なキャリアパスが可能な会社です。その方の技術的なバックグラウンドを理解した上で、お人柄にも触れさせていただき、お任せするプロジェクトなどを決めていければと考えています。
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